自分は、大量殺戮を企てるかわりに着ぐるみを選んだのだと思う。 最初に着ぐるみを作った動機は、一種のテロリズムだった。 安穏と平和な毎日過ごしている人々の日常を襲撃し、掻き乱してやろうという悪意が発端だった。 遊園地でもなく、イベントでもなく、ただ何もない街角や路地裏に突如、奇妙な生物が現れる。目的も定かでなく、ただひたすら怪しいだけの存在…… そんな着ぐるみを作ってやろうと思った。 当時の僕はミッキーマウスやキティちゃんやミッフィを、心から憎んでいた。 「可愛さ」とは一方的で暴力的な権力だと思っていた。誰もそれに逆らうことができない。 だからこそ逆にそれを利用して、着ぐるみには「不気味だけど可愛い」という造形的なデザインをほどこした。 街角で出会った人々が、怒っていいのか笑っていいのか判断に困ってしまうような、そんな悪意を盛り込んだのがスパンキーだった。 自分は、愚かで良かった。 机上の空