レオニード・ロゴゾフ医学博士は、信じ難い外科手術を成功させた。南極大陸のソ連の基地で、盲腸を自分で摘出したのだ。彼は一躍ソ連のヒーローになり、ほぼ同時期に人類初の有人宇宙飛行を成し遂げたユーリー・ガガーリンと比較された。 信じ難い話だが、ソ連の医師レオニード・ロゴゾフ(1934~2000)が行った、自分で自分の盲腸を摘出する手術は、空前絶後というわけではなかった。すでに1921年に、アメリカの外科医エヴァン・オニール・ケインが、自分の盲腸を摘出し自分で縫合する実験を行っていた。 ただ、彼とロゴゾフのケースが違うのは、手術を行ったときの条件だ。米国医師は、設備が完備した手術室で、いざという場合に備えた外科医チームの立ち合いのもとで、「自己手術」をしたのだが、ロゴゾフはそうではなかった。また、彼が手術したのは、別に科学の進歩のためではなく、自分が生き残るためであった。 生死の境 1960年、若