福島あつしさん(39)が初めて、お客さんの家を訪問したときの感想だ。福島さんは当時22歳。大阪芸術大学の写真学科を出て、横浜の写真専門学校の研究科に入った。友人と共同生活するためのバイト探しをしていて、無料の求人情報誌で《高齢者専用お弁当配達員募集》という求人広告を見つけた。 「どういう仕事なんだろう」。好奇心から応募して面接を受けて即採用。その場で店長から「じゃあ、これから実際に配達に行くから、一緒に行こうか」と誘われて同行した。 「それが衝撃的でした。もう廃虚みたいな家ばかり回るんです。周りの風景に溶け込んで、生気が感じられない。そんな家ばかりにバイクを止めて、ピンポンを押していく。なかなかお客さんが出てこない家にはドアを開けて入っていっちゃう。お客さんの安否確認も仕事のひとつなので、お弁当は絶対手渡ししなければいけない。だから中に入っていいんだと後からわかりました」 それが2004年
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