生活保護受給の相談に訪れた女性を追い返しながら、担当職員がその女性になりすまして約330万円の保護費を不正受給するという前代未聞の事件が奈良県橿原市で起きた。生活保護をめぐるさまざまな問題が明るみに出る中、不正を水際で見破って食い止めるのも職員に課せられた責務だが、懲戒免職となり、奈良県警に逮捕された橿原市の職員は逆に、知り尽くした制度の「盲点」をつき、担当者にしかできない手口で犯行に及んでいた。(西家尚彦)切実相談を「金」に 平成22年8月、橿原市役所に60代の女性が生活保護の相談に訪れた。この女性は当時、市内の墓地近くに止めたマイカーの車内で連日寝泊まりしていた。 対応したのは、当時橿原市生活福祉課課長補佐だった高岡一彦容疑者(53)だった。 高岡容疑者は女性の相談につれなかった。「マイカーの所有は資産にあたる。早急に売らなければ、生活保護費は支給されない」などと指摘した。自宅代わりの