今週と来週は、韓国のジャンル小説について、『日本語で読みたい韓国の本-おすすめ50選』第3回に掲載のコラムを2回にわたってご紹介します。 韓国の「ジャンル小説の流れ」を見る。 SFというジャンルの想像力 大学時代に卜・鉅一(ポク・コイル)の『碑銘を求めて(映画:ロストメモリーズの原作)』を読んだことを思い出す。この小説はサブタイトル「京城・昭和六十二年」からも分かるように、韓国が日本に併合された状態が1987年まで続いているという代替歴史(Alternative history)小説だ。初めて触れた『碑銘を求めて』で私は、以前に読んだ純文学小説とは異なる小説の面白さを感じた。いや、衝撃的で斬新な世界観にひどく魅了されたと言う方が正しいだろう。それがSFというジャンルの想像力によるものだと気付いたのは、もっと後の話だが。 ジャンル小説とは何かという点には様々な意見があるが、一般的に「普遍的な