ある個人的な集まりで現在ヒット中の映画『怒り』が話題にのぼり、「あの映画、私はちょっと……」と首を横に振る20代女性がいました。それまでこの映画については好意的な声しか聞いたことがなかったので、どの点が「ちょっと」なのかを尋ねたところ、「レイプシーンが」と返ってきたのでした。 居合わせたほかの女性からも、「(『怒り』にかぎらず)レイプシーンは観たくない、映画でわざわざ残酷なシーンを描く必要はない」と声が上がりました。その時点で同作品を未見だった私にはそのシーンのがどれほど残酷なのか見当がつかなかったものの、嫌悪感がありありと浮かんだ女性たちの顔を見て、よほどのレベルであると推察しました。 リアルで残酷なレイプシーン レイプシーンであれ何であれ、個人の「観たい/観たくない」を判断基準として、「描くべきではない」とするのは非常に危険なことです。当然ながら映画をはじめとするすべての表現において、