以前ほどではないが、書店に安倍晋三首相を称える本、韓国や中国の危機を煽る本などが書店に並び続けている。愛国本や嫌韓本は書店の一角を占め、それ自体が特定の政治的主張を訴えるような印象も与えている。平たくいえば、書店の店頭を使って政治的主張をするデモをしているかのようだ。 普通の感覚を持っている人ならば、「あれ、なぜこんな恐怖心を煽るような本がこんなにも並んでいるのだろう?」と思うかもしれない。売れるから、というのは一つの答えだろう。しかし、売れるから並ぶ、というのは当たり前のことであり、なぜ売れるようにしているのか、という視点から考えなくてはならない。 鍵となるのは、取次を中心とする出版流通システムだ。 取次の仕組みと愛国・嫌韓本 出版社が本をつくり、書店に販売するまでに、取次という本の問屋が介在する。取次は、本を出版社から全国の書店に送り込むと同時に、出版社に書籍の代金を渡すという役割を持