田丸雅智といえば、この春に刊行された最初の著作『夢巻』(出版芸術社)で一躍ひのき舞台へ躍りでた俊英。彼の「ショートショート復興」を目ざす志はSF関係では知られていたものの、一般にはほぼ無名だった。しかし、『夢巻』は発売直後から各メディアで取りあげられ、その後も順調に版を重ねている。実力が評価されているのだ。まさにショートショートの新星である。 この文脈での「新星」には特別な意味がある。日本でショートショートが広く親しまれているのは、星新一の功績が大きい。礎を築いたばかりか、いまなお(歿後17年が経過したにもかかわらず)星さんはショートショートの代名詞だ。ショートショートで「新星」と言えば、その星さんを後継する存在ってことになる。星さんが唯一「弟子」と認めたのは江坂遊だが、田丸さんははそのまた弟子にあたり(江坂さんが主宰する「星派道場」出身)、人脈的にも正統につらなっている。ただし、江坂さん