この日のアルウィンの入場者数は9890人。スタンドには横浜F・マリノスや日本代表のユニホーム姿も見られた【宇都宮徹壱】 「マーツダナオキ 松本のマツダナオキ おれたちと この街と どこまでもー」 そのコールが最初に発せられたのは、18時55分ごろのことであった。本来ならば、すでにキックオフから25分が経過している時間帯である。しかし「雷雲が付近で停滞している」ことを理由に、18時30分のキックオフは10分後に、30分後に、さらにそれ以降に繰り越され、発表のたびにスタンドからは「えーっ」という声とともにため息が漏れた。その後、しばらくの間アルウィンは、時おり天空に走る稲光に「おおっ!」という歓声が挙がる以外、何とも奇妙な静寂が支配していた。だが、さすがにしびれを切らしたのであろう。バックスタンドのファンのひとりが松田直樹コールを始めると、やがてそれはバックスタンド全体に、そしてゴール裏へと