新型コロナウイルスの世界的流行とアメリカ大統領選にまつわる一連の騒ぎのなかで、全世界的な社会問題として認識されるようになったのが陰謀論の氾濫だ。コロナは人民解放軍の生物兵器であるとか、アメリカは児童性的虐待と人身売買に手を染めるディープ・ステイトによって操られているといった話が代表的である。 陰謀論は左右の政治思想を持つネットユーザーや論壇人、または幸福の科学や法輪功、行動する保守や新左翼セクトといった、カルト的な新宗教団体や政治団体によって担われることが多い(なお中国系の疑似宗教団体・法輪功とコロナ陰謀論の関係は、拙著『現代中国の秘密結社 マフィア、政党、カルトの興亡史』[中公新書ラクレ]で詳述している) 陰謀論をひとたび信じてしまえば、たとえ個人レベルであっても、思わぬ恥をかいたり他者に失礼な振る舞いをおこなってしまったり、ひどい場合は人命にかかわる事態すら招く。経営者や政治家のような