著者(中村伊知哉・慶応大学教授)は、私の長年の友人である。郵政省を10年前に「脱出」し、今は総務省のブレーンとして「情報通信法」についての研究会の中心になっている。ここでは、本書のコアである政策の部分について簡単にコメントしておく。 著者の専門である「コンテンツ政策」が大きな分量を占めているが、率直にいってよくわからない。そもそも「コンテンツ政策なんてあるの?」と経産省のコンテンツ課の官僚でさえいうぐらい、役所と一番なじまない分野だろう。もちろん著者はそれを踏まえた上で、政府に何ができるか、いろいろさぐっているのだが、私は文化庁みたいに民間のじゃまをしないことが最高の政策だと思う。その意味で重要なのは著作権なのだが、これは他省庁の縄張りに口を出さないという節度からか、7ページ半しかない。 情報通信法をめぐる議論でも、メディアからの批判は「ネットコンテンツ規制の強化」に集中した。これは中