放送大学叢書通信001号(2011年夏発行)より、美学・芸術学者の青山昌文先生のエッセイをご紹介します。 1971年、私は、青森県立弘前高校を卒業して、いわゆる自宅浪人をしていました。予備校に通わず、自宅で一人で受験勉強をしていたわけですが、その時、NHKが翻訳して放送したのが、BBC制作の番組CIVILIZATION(日本語版題名「芸術と文明」)でした。これは当時の高名な美術史家であったケネス・クラークが、45分番組全13回のシナリオからナレーションまでを全て一人で担当し、ヨーロッパとアメリカの117カ所にロケをして、芸術作品のそばに実際に立って現地で芸術について語った連続番組です。 私は、次から次へと繰り広げられてゆく、ヨーロッパ美術の珠玉の作品たちに、このような世界があるのか、という新鮮で深い感動を覚えました。私が美学・芸術論を専門とするようになったのは、まさにこの、一人の学者が全責