2007年以降、ワーキングプア対策、生活保護との逆転解消のため、最低賃金引き上げが進んできた。特に民主党政権では全国平均時給1000円が目標になった。一方、先の衆議院選挙では、日本維新の会のように市場メカニズムを重視した最低賃金制度への改革を求める党も現れた。政権交代後の最低賃金政策のあり方を考えるために、近年の研究を紹介し、政策的含意を考えてみたい。 ◆◆◆ 最低賃金の影響について理論、実証両面において現時点で最も包括的な文献研究(サーベイ)は米カリフォルニア大学アーバイン校のディヴィッド・ニューマーク教授と米連邦準備理事会(FRB)のウィリアム・ワッシャー氏の08年の著作、「最低賃金」である。 最低賃金政策の是非で最も問題になるのは雇用への影響だ。一般に完全競争的労働市場では、賃金が上がれば雇用は減る。一方、企業が労働市場で価格支配力を持つ買い手市場では、賃金水準、雇用量とも競争市場よ