注目を集めた推計作業 四月二十八日、全国一七県の知事らがオンライン会議で「九月入学」の導入を含めた検討を政府に要請するメッセージをまとめた。さらに、翌日、安倍首相が「前広に」という表現で選択肢として検討すると述べた。そこから約一ヵ月の検討を経て、九月入学の導入が見送られたことは記憶に新しい。 筆者は、五月の一ヵ月間に、本政策に関する推計に携わった。これは省庁などから依頼されたものではなく、苅谷剛彦オックスフォード大学教授の呼びかけに集まった研究者グループで独自に手がけたものだ。舞台裏を明かせば、そもそもICTや教育格差に関するデータ分析を進めていこうかと議論をしていた矢先、九月入学の議論が浮上したため、急遽取り組むことにした次第である。 我々のスタンスは、九月入学への賛否はさておき、具体的な数字をもって、この政策のインパクトを推定することであった。そこでまず政府統計の集められている「e-S