兵庫県の三木・吉川の藤田さん、丹波の久下(くげ)さん、そして丹波篠山の中沢さん、酒井さん。それぞれの地域に多いことで知られるこれらの名字、広まるきっかけは承久(じょうきゅう)の乱(1221年)にあったという。鎌倉幕府と朝廷の覇権争いに端を発し、NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」でも取り上げられたこの戦い。はるか昔、兵庫から遠く離れた場所で起こった出来事がどのように影響したのだろうか。(篠原拓真) 承久の乱は、後鳥羽上皇が鎌倉幕府執権の北条義時に対し、討伐の兵を挙げたことに始まる。源頼朝の妻北条政子の演説が関東の武士たちを結束させ、幕府側が圧勝した。 姓氏研究家の森岡浩さんは、「歴史上で何度か名字が移動する時期はあるが、承久の乱は現在に影響を残すほどの大移動だった」と説明する。 幕府は朝廷方の所領約3千カ所を没収し、功績のあった武士らを土地の管理者「地頭」に任命。西日本を中心に土地を与えた。