第1章:キノコって水の中でも育つの?「キノコ」と聞いて、どんな場所を思い浮かべますか? 多くの人が、森の中の朽ちた木や、湿った地面の上にひっそりと顔を出す姿を思い浮かべるでしょう。確かに、キノコは湿気を好む生き物です。しかし、それでも「水の中」、つまり完全に水没した環境で育つキノコがあるとは、誰もが驚くはずです。 そもそも、キノコは「真菌(しんきん)」という生き物の一種です。カビや酵母と同じ仲間で、植物でも動物でもありません。栄養を吸収する菌糸(きんし)と、胞子を飛ばすための子実体(しじつたい)から構成されています。私たちが普段「キノコ」と呼んでいるのは、この子実体の部分です。 真菌の多くは、空気中の酸素を使って呼吸しますし、胞子も風に乗って拡散します。そのため、「水中では生きられない」「ましてやキノコの形にはならない」と長らく考えられてきました。 しかし―― 2005年、アメリカの研究者
