TBSラジオ『アフター6ジャンクション』のコーナー「週刊映画時評ムービーウォッチメン」。宇多丸が毎週ランダムに決まった映画を自腹で鑑賞して生放送で評論します。(コーナー前のメール読みゾーンにて)宇多丸:……はい、ということで。本当はさっき、オープニングで、このゾーンを使ってリスナ
※本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ています 「竜とそばかすの姫」を見た後、はらわたが煮えくりかえっていた。 仮想テクノロジーによる没入型SNSという「サマーウォーズ」のアップデート、家庭内、社会内で孤立する若者を描いた「おおかみこどもの雨と雪」の延長線、何より「時をかける少女」との演出的な相似性。これまで氏の作品を見続けてきた者として、本作を総決算として見るのは非常に容易だ。むしろ細田守監督もそのつもりで本作に向き合っているのだろう。 結果、本作は市場が求めていた細田映画の再来として好調なスタート。細田史上最大のヒット作になるとの予想も出ている状態だ。だがそれと同時に逆の集大成――すなわち、過去作でも度々言及されてきた細田作品の負の側面、すなわち「社会システムへの根本的な不信」、それを原因とする「脚本の致命的な欠陥」。加えて結果として出力されたものが受け手側に示す「歪んだメッ
映画ウェブサイトより ライムスター宇多丸がパーソナリティーを務めるTBSラジオ『アフターシックスジャンクション』内のコーナー「週刊映画時評ムービーウォッチメン」で『STAND BY ME ドラえもん2』を批評。「蛇足にして駄作中の駄作」とまでこき下ろした。 11月20日公開の同映画は2014年に公開された『STAND BY ME ドラえもん』の続編で、原作のなかでも名作として知られる「おばあちゃんのおもいで」をベースに、オリジナルストーリーを加えて再構築したもの。前作で描かれたのび太の結婚前夜から続く、結婚式当日にのび太が逃げ出したことから巻き起こる騒動を描いている。 宇多丸はこの映画の脚本を担当した山崎貴について「作り手としての志が二次創作っぽい人」で「良く言えば原作に対して山崎貴流の解釈というのを毎回している」と評し、「彼が美談として提示するものに、割とはっきりとした倫理的違和感を抱く
日本公開から半年を経て、「天気の子」が北米で公開になった。英語吹き替え版と、日本語に英語字幕付き版の2バージョンの公開で、1,000スクリーン程度と、まずまずの規模だ。批評家の評価は概ね良好で、rottentomatoes.comによると、94%が褒めている。「L.A. Times」も、17日(金)の新聞で、紙面の半分以上を割いてこの映画を紹介。見出しには、「若さの危険と希望:リアリティを見失うことなく、野心的な少年とマジカルな少女を巧みに描く」とある。 この批評記事を書いたチャールズ・ソロモンによると、今作は、「新海誠がアニメ界における新世代のリーダーのひとりであることを確認する」ものだ。「君の名は。」と今作は、どちらも「ごくありきたりに見える若い人の恋を、現実的かつマジカルなジャーニーへと導き、さらに、社会的な問題にも触れる」。”問題”のひとつはもちろん地球温暖化だが、帆高と陽菜の姿か
エルサの「自己実現」はどう描かれる? 2013年に大ヒットを飛ばし、文化現象と言えるほどの影響力を持つようになったディズニー映画『アナと雪の女王』の続編である『アナと雪の女王2』が11月22日に公開された。この原稿を書いている12月9日時点でもヒット中で、世界興行収入は9億ドルを超えた。 この続編については賛否両論あるが、現時点で映画のレビュー点数化サイトであるロットントマトズではプロの批評家による評価が78%、それ以外の観客の評価が92%で、人々はおおむね満足して映画館から出てきていると言える。 本レビューの著者は、第1作について「理想宮か、公共彫刻か?――『アナと雪の女王』」という批評を書いたことがある。そこで指摘したのは、ヒロインのひとりであるエルサが一度は捨てた故郷アレンデールに戻り、女王としてのつとめを果たすことを決意するという結末は幸せと言えるのか、ということだった。 エルサは
はじめに 細田守映画には2種類ある細田守を知らないほうが楽しめる映画 デジモン、サマーウォーズ 細田守を知っているほうが楽しめる映画 バケモノの子、未来のミライ 2つの細田守らしさ描きたい内容を単純化しつつわかりやすい折り目をつけ、誰でもついていきやすい速度でありながら明確な変化を持って描かれる最大公約数的なストーリーテリング。画面を広く使いつつ視点を大きく動かさないようにする雄大なカメラワーク。日常と幻想の間に半透明の敷居を置き両者をはっきり区別しながら横へと並べる非連続的な非日常性。これがいい意味での細田守らしさ。 ショタコンにしてケモナー。自意識過剰なキャラクター。誰もが承認欲求に飢えているという断定の元に進む構ってちゃんストーリー。全てを自分の口で説明してしまう自信のなさ。ヒステリックさと寛容さの両極端。これが悪い意味での細田守らしさ。 悪い意味での細田守らしさを楽しめるか?未来の
いまTBSラジオで、若者リスナーから人気を集める番組がある。毎週月~金曜日の18~21時に放送される「アフター6ジャンクション」だ。番組パーソナリティーを務めるのは、ヒップホップグループ「ライムスター」の宇多丸だ。音楽から映画、本やアイドルなどカルチャー系の話題を流れるようなトークで扱い、TBSラジオに新風を吹かせた。昨年4月の首都圏個人聴取率調査で、TBSラジオは20~34歳男女で聴取率1位に躍り出ている。同社会見はこれを「快挙」と言い、象徴的事例に挙げた。人に向かって話すこと、批評ってなんだろう。若者にラジオの魅力を伝える宇多丸に聞いた。(取材・文:Yahoo!ニュース 特集編集部/写真:松岡一哲) 「アフター6ジャンクション」の番組紹介文にはこうある。「あなたの好きが否定されない、あなたの好きが見つかる場所」――そんな番組構成は硬軟自在だ。今年のアカデミー賞やグラミー賞の振り返りコー
劇場用アニメーション『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』は、アニメーターによる従来の職人的な手描き技術と新しいCG技術の融合によって生み出された、クールな映像表現、また士郎正宗原作、押井守監督による先進的なテーマや哲学性などによって、アメリカをはじめ世界に日本製アニメの存在を知らしめた代表といえる作品である。『マトリックス』のウォシャウスキー姉妹監督など、決定的な影響を受けたことを表明するクリエイターも少なくない。その伝説的作品をハリウッド映画として実写映像化したのが、本作『ゴースト・イン・ザ・シェル』である。ここでは、押井監督版のアニメーション映画を、分かりやすく『攻殻機動隊』、アメリカの実写映画を『ゴースト・イン・ザ・シェル』と表記し、主にテーマの面で両者を比較しながら、賛否渦巻く実写版の内容を検証していきたい。 『攻殻機動隊』は、人体よりも高性能な「義体」を、人間
日本公開から約8ヶ月を経て、「君の名は。」が、現地時間7日(金)、ついに北米公開された。英語吹き替え版とオリジナルの日本語版(英語字幕付き)、ふたつのバージョンがあり、タイトルはそのまま「Your Name.」だ。 オスカー候補入りこそ逃したものの、今作は、L.A.映画批評家協会から2016年の最優秀アニメに選ばれている。投票者に送られるスクリーナー(DVD)や映画祭などで見ていた現地ジャーナリストからも良い感想を聞いていたので(ある在L.A.スペイン人ジャーナリストは、昨年のベスト映画とまで言っていた)、全米公開の折に出る批評は良いのではないかと予測していたら、まさにそのとおりだった。 「L.A. Times」は、大規模公開される 「Going in Style」や「Smurfs: The Lost Village」より前のページで、もっと大きいスペースを割き、「君の名は。」を紹介。「壮
参考:菊地成孔の『ラ・ラ・ランド』評:世界中を敵に回す覚悟で平然と言うが、こんなもん全然大したことないね 掲載稿が米国アカデミー賞の発表前に書いた原稿なので、結果を踏まえた上で、追補を書くことにした。 と、思っていたら、どういうわけだか、筆者のリアルサウンドでの連載中、最も多いビュー数と、いいね!数を稼いでしまったとか何とかで、有り難いと言えば言えるのだろうが、一度SNSを全部止めてみればわかるが、何が起こっているかわからない。 ただ、数多く俎上に登ったのであれば、これは当然、数多くの支持者と、数多くの不支持者を生んだと思われるが、支持されるにせよ、されないにせよ、何れにしても、この映画に対し、以下の指摘はなかったか、或いは極端に少なかったのではないか? と推測する。 それは何かと言えば「ハッキリ言えなくて気の毒だ、言っちゃえば良いのに」という事だ。 え? なんて言っちゃえば良かったのか、
菊地成孔氏の「ラ・ラ・ランド」評に発した、「観客を批評するのはOKなのか? アウトなのか?」というコメントが面白かった。 観た人を馬鹿にするな まずは、発端となった、菊池氏のエントリー。 これに関して、反論の意見、特に観客を馬鹿にするのはダメだ! という意見がでてくる。代表的なツイートはこちら。 「恋に飢えた女どもを中心にした全人類どもを『セッション』の1000倍の力でヒーヒー言わせる」ララランドをバカにするのはいいがララランド見てる人をバカにするのはルール違反でしょ / “菊地成孔の『ラ・ラ・ランド』評:世界中を敵に回…” https://t.co/Cg0J4nSEyV— アオヤギミホコ (@ao8l22) 2017年3月6日 元ナタリーの唐木元氏の疑問 このコメントに関して、元ナタリーの唐木元氏が以下のようにコメントする。 菊地さんのララランド評より興味深かったのは、評への反応に「作品
*以下のテキストは、 マスメディアがアカデミー賞レースの報道を一斉に始める前の、2月20日に入稿、更に4日前に書かれたもので、つまり所謂 「あとだしジャンケン」ではない旨、冒頭に強調しておく。 今時これほど手放しで褒められてる映画があるだろうか? 当連載は、英語圏の作品を扱わないので今回は<特別編>となる。筆者は映画評論家として3流だと思うが、本作は、複数のメディアから批評の依頼があった。大人気である。「全く褒められませんよ」「こんな映画にヒーヒー言ってるバカにいやがられるだけの原稿しか書けませんけど」と固辞しても、どうしても書けという。 そりゃあそうだ。筆者は一度だけヤフーニュースのトップページに名前が出たことがある。ジャズの名門インパルス!レーベルと、米国人以外で初めて契約したから? 違う。女優の菊地凛子を歌手デビューさせたから? 違う。正解は「『セッション』を自分のブログで酷評したか
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