<香港での装甲車押収事件で露呈した中国とシンガポールの対立。中台双方と建国以来の親交を重ねてきた華僑国家でさえ、習政権の覇権主義に堪忍袋の緒が切れた> (写真は香港で押収されたシンガポール軍の装甲車、2016年11月24日撮影) 昨年11月下旬、シンガポール軍が台湾で軍事演習を終えた後、民間輸送船で返送中の軍用車両9台を帰路の香港で税関当局に押収されてから2カ月。「武器密輸の疑い」のためとしていたが先週、香港当局から返還するとの連絡を受けたとシンガポール外務省が発表した。他国軍の装甲車押収という異例の事態に対立を深めたシンガポールと中国の姿は、両国の関係悪化を印象付けた。 歴史的背景を振り返ろう。もともと、シンガポールと中国は緊密な関係にあった。両国が国交を樹立したのは90年と遅かったものの、国民の約4分の3を中国系(華人)が占めるこの国の指導者層は、独自の地政学的立場を意識して国家を運営