等身大の人間を象った像がずらりと並ぶ兵馬俑。見た人ならば誰しも思うでしょう。 「何のためにこんな物を作ったのか?」 私たちもこの素朴な疑問を暖めながら多くの研究者にお話を伺い、取材を進めていきました。そもそも土の人形を墓の中に埋めること自体が、日本人にはなかなか理解しづらい行為です。取材に先立ち、まずイメージを膨らませました。この壮大な兵馬俑が作られるまでには、さぞかし多くの中国の墓で兵馬俑に似た“プレ兵馬俑”的な人形が作られていたに違いあるまい。始皇帝の兵馬俑はその集大成なのではないだろうか。そんな想定のもとで取材した研究者たちの言葉は、意外なものでした。 「兵馬俑のような、等身大でリアルな造形の俑(副葬品の人形)はそれ以前には全く出土しておらず、その後もない。まさに空前絶後の遺跡です。」 写真①は、戦国時代末期の秦の墓から出土した騎兵の俑。兵馬俑が作られる前、およそ100年以内の俑です