不戦の誓いを起点に欧州統合は進んだが、1960年代〜70年代の統合は停滞した。しかし80年代、単一通貨ユーロ導入へと歯車が回り出す。ノーベル平和賞を受賞したEUの歴史を振り返る。 ジャン・モネと並び、欧州統合の歴史に残る偉業を遂げたのが、1985年から10年間、欧州共同体(EC)委員会の委員長を務めたフランス人、ジャック・ドロールである。ドロールはもともとフランス社会党の経済顧問を務めており、81年の同国大統領選で勝利したミッテランに、財務相に抜擢された。 84年の内閣改造では「ドロールを首相に」との声が出るほど実績を挙げたが、ミッテランが首相に選んだのは、側近だったローラン・ファビウス(現仏オランド政権の外相)。ドロールはパリを離れ、EC委員長の道を選んだ。当時、ドロールの支援者となったのは、西ドイツのコール首相である。コールは財務相時代のドロールの仕事ぶりを気に入っており、EC委員長