厳しい寒さが続いた1月。東京都大田区中馬込の住宅で、死後1週間以上が経過した無職の男性(87)の遺体を近所の知人が見つけた。認知症の妻と知的障害を持つ息子と暮らし、買い物や食事の準備、施設への送迎など懸命に2人を介護していた男性。布団の中で息絶えていたが、妻と息子がその死に気付くことはなかった。男性の最期は、高齢者が高齢者を介護する「老老介護」の悲しい現実を映し出している。(石井那納子) 昔からの近所づきあいが残る住宅地で、坂道の多さから「九十九谷(つくもだに)」と呼ばれる馬込地区。男性は認知症の妻(80)と知的障害を持つ息子(51)の3人で生活していた。年金生計で暮らしぶりはつましかった。 「最近、お父さんが食事をしないの」。1月15日夜、妻は近所の知人女性にこう打ち明けた。心配した女性が16日に家を訪れ、布団に横たわったまま亡くなっている男性を見つけた。 警視庁池上署の調べによると、死
無理心中を図った八十七歳の夫 十二月半ば、長野市を囲む山々にまだ雪はなかったが、犀川の鉄橋からは北アルプスの白い蜂が垣間見えた。篠ノ井駅で降り、田園の中をタクシーで松代町へ向かう。オリンピッグ開会式会場の近くを過ぎ、千曲川を渡る。 畦川邦夫さん(43)宅の、こたつのある八畳の居間に通されると、額に飾られたご両親の金婚式の写真が目にとまった。洋服で盛装した老夫婦が、おだやかな表情をたたえている。金婚式の日付は昭和六十三年三月十五日である。 しかし、二人はもうこの世の人ではない。九七年三月四日の夜、夫の畦川三郎さ(87)は妻のくにさん(78)を絞殺し、百メートルも離れていない小川の橋の欄干 に紐で首を吊って自殺した。痴呆症の妻の 介護に行き詰まった末の無理心中であった。 「仕事からもどったら、線香の煙とにおいが立ち込めてるんです。おかしいなあと思ってみると、母がこたつの横に寝てました。まさか
福井県大野市の旧火葬場で焼かれて白骨化した2人の遺体が見つかった。歯の治療痕などから近くに住む80歳の男性と82歳のその妻であることが分かった。 付近には乗用車がエンジンをかけられたまま放置され、クラシック音楽が大音量で流されていた。不審に思った近所の住民が警察に通報。警察当局が捜査した結果、使用されなくなって30年たつという火葬場の火葬炉から2人の遺体が発見された。 使用された乗用車の中からはガソリンスタンドの伝票の裏にその日自宅を出てからの行動が事細かにメモされていた。 「午後4時半、車の中に妻を待たせている。」 「午後8時、妻とともに家を出る。」 「車で兄弟宅や思い出の場所を回って焼却炉にたどり着いた。」 「妻は一言も言わず待っている。」 「炭、薪で荼毘(だび)の準備をする」 「午前0時45分をもって点火する。さようなら。」 車から流れるクラシック音楽の中、2人は火葬炉に入りロープを
介護悲劇なぜ続く 殺人・心中今年30件 疲れ、孤立の末 介護に疲れた夫が妻を殺害する事件が相次ぐなど、高齢者介護を巡る殺人や無理心中、虐待が後を絶たない。家庭で行われてきた介護を社会全体で担うことを目指して2000年に介護保険制度が導入され、今年4月に施行された改正介護保険法や高齢者虐待防止法でも様々な防止策が講じられた。にもかかわらず、「介護悲劇」がなくならないのはなぜなのか。(社会保障部 小山孝、安田武晴、大阪本社社会部 佐々木栄) 相談翌日 先月22日朝、兵庫県伊丹市の県営団地の一室。自ら110番した74歳の夫は、駆け付けた警察官に、「私が殺しました。世話が大変でした」と告げた。傍らには50年近く連れ添った2歳年下の妻が首にロープを巻かれ、息絶えていた。夫は殺人の現行犯で逮捕され、今月10日に起訴された。 夫婦は2人暮らしだった。妻は2月ごろから認知症が悪化し、昼夜を問わず団地内を
リリース、障害情報などのサービスのお知らせ
最新の人気エントリーの配信
処理を実行中です
j次のブックマーク
k前のブックマーク
lあとで読む
eコメント一覧を開く
oページを開く