話は、突然1本のメールが僕に届いたことから始まる。 ドイツ、ベルリン自由大学のフランク・ポストバーグ教授が連絡をくれたのである。 ポストバーグと僕は、10年来の共同研究の間柄にある。彼は、NASAのカッシーニ探査機に搭載された、ダスト分析器チームの中心人物である。土星の氷衛星エンセラダスの地下海から噴き出す海水を、このダスト分析器で分析し、海水成分を明らかにしてきた世界的な宇宙科学者である。 「最近、エンセラダスからの海水の粒子に奇妙なものを見つけたんだ。何だと思う?リンだよ。リンが海水に異常に濃集しているんだ。この話、興味あるかい?」 時を同じくして、僕らの研究室でも、全く独立にエンセラダスの海にはリンが高濃度で存在しているのかもしれないという実験データを得つつあった。 エンセラダスの海底にある岩石は、地球に落下する隕石のような組成だと推定されている。僕らは高価な隕石を購入して、惜しげも
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