「公正証書遺言」は相続時のトラブルを防ぐ有効なツール…そのように理解している方も多いのではないでしょうか。しかし実際には、親族間の争いの原因になったり、遺言書を巡る裁判によって無効が言い渡されてしまうケースも存在します。では、どのような状況下で公正証書遺言が無効と判断されるのでしょうか。本記事では、相続問題を多く手がける弁護士の北村亮典氏が、実際の裁判事例を取上げながら解説します。 「判断能力が衰えた状態」で書かれた遺言書 相続後の紛争を避けるための有効な手段として、まず第一に挙げられるのが「公正証書遺言」でしょう。立会人のもとに作成され、公証役場で半永久的に保管される公正証書遺言は、形式不備の心配も、偽造や紛失の心配もなく、自筆証書遺言に比べて信頼性が高いと考えられています。 しかし実際には、その存在や記述内容を巡り、相続人間で紛争の種になることは珍しくありません。結果、裁判によって「こ