世間並みにやらなければならないことは、避けがたいものばかりである。 しかし無視できないからといって「どうしても必要なことだけはやろう」などと思っていると、したいと思うことが多くなるばかりで、自由がきかなくなり、余裕もなくなる。些末なことばかりに時間を取られて、一生がむなしく終わってしまいかねない。しかもそうやって終わってしまったときにさえ、やり残しがたくさんあるはずだ。 だいたい自分の人生はすでに思うようになっていない。いいかげん、余計なことは全部捨て去ってしまうべき時なのだ。 信用を守ろうとすることなどやめてしまう。 礼儀に気を煩わすこともやめてしまう。 こういう気持ちが理解できない人には「あいつは狂った」とでもいわせておけばいい。正気を失って人情が理解できなくなったと思えばいい。 非難など意に介さない。その代わり、この決意を褒められても気にしないようにする。 以上は、吉田兼好の『徒然草