むか~し昔。神話時代のころ。 中国に高辛氏(こうしんし)という帝王がいらした。そのお方にはお子さまがいらしたが、若くしてお亡くなりになった。 七月七日のことだそうな。 御子の霊魂は一つ足の鬼となって疫病を流行らせ、人々がばったばったと倒れていった。疫病というのは、人から人へと感染する流行病のことじゃ。 かかったものは高い熱に苦しんだ。恐ろしい病気じゃったという。 困り果てた人々は、ふと思い出した。 「あの方は生前、麦でこしらえた餅がお好きであった」 「しょっちゅう召し上がっておったのう」 「あれをお供えすれば、お鎮まりになるのではなかろうか」 ……とな。 そこで御霊の御前に「索餅(さくへい・さくべい)」という麦餅をお供えしてお祭りし、お心を慰めたとか。 効果があったんじゃろうな。 この国でも故事に倣って索餅を神前に供えるようになった。 七月七日には、人も神とともにこれを食べる。 そうしてこ