本当の梅雨を体験したことがない温室育ちの甘ちゃんの戯れ言だね。 本当の梅雨はあなたが考えているようなヌルい気象現象なんかじゃ決してない。 それは、人生の絶頂期にある人間を、一瞬にして不快のどん底に叩きつける理不尽な暴力。 それは、どんなに身構えて耐え凌ごうとしても、容赦なくジメジメとしたずぶ濡れの境遇に追いやられる突然の絶望。 1日は24時間誰にでも平等にやってくるけれど、本当の梅雨に巻き込まれるのは、天に見放された一握りの生け贄だけだ。 心が晴れやかであれば梅雨が梅雨では無くなるだって? そんな放言、あなたが燔祭の子羊として本当の梅雨に打たれたことのない人間だから言える幸せな理想論だよ。 もちろん、私はあなたを責めているわけではない。 ただ、あなたは恵まれた存在で、でも、だからこそあなたの教訓は今まさに梅雨の只中にある不幸な子羊たちにとっては、なんの救いにも慰めにもならないことは分かって