NHKドラマ「男たちの旅路 シルバー・シート」(1977年) 高齢者は、若いころに比べれば弱くもろい。活動は緩慢になり、思考力も能率が低下する。それは誰にも訪れる加齢の現象である。しかし当然だが、高齢者はもとから高齢者だったわけではない。 若年から長い間の会社勤めをし、または自営で店を切り盛りしていた。あるいは家事を一手に引き受け、また育児をこなしていた。さらには、書や舞踊や三味線にたけ、弟子を育てたかもしれない。スポーツの仲間と競技会で活躍していた人もいただろう。高齢者はそれら長い間の道のりを背負って、高齢者になったのである。 人は高齢者を見たとき、そのことをなかなか思い起こせない。動作が鈍く、認知能力が心配な年老いた人だ、とだけ思ってしまう。とくに医療者は病にだけ注目してしまい、人生には思いが及ばない。
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