良質な長編エンターテインメント小説に贈られる松本清張賞(日本文学振興会主催)に、ガード下の従業員食堂で働く山口恵以子(えいこ)さん(54)=東京都江戸川区=が選ばれた。「世間は『なんで食堂のおばちゃんが』と思うでしょうが、だからこそ書ける」。春巻きを揚げ、ご飯をよそう手でパソコンをたたき、遅咲きの花を咲かせた。 (井上幸一) 職場は、官公庁や大手企業に新聞を配達する丸の内新聞事業協同組合(千代田区)。JR有楽町-新橋駅間のガード下にある。五人のスタッフを束ねる食堂の主任で、朝昼夕のメニューを考え食材を購入。調理室に立つ。一日に用意するのは八十食。「体を使って働く人にはボリュームが大事。四、五十代は毎日肉でなくてもいい」と細かく気を配る。