前回はアベノミクスの概要を説明し、経済成長率や物価上昇率のような重要な目標が達成されていないこと、働いて暮らす人びとの生活があまり改善されていないことを説明しました。しかし国民は、民主党政権時代のだらしのない態度に辟易して、いまでも安倍政権に淡い期待を抱いているようです。「信頼できる野党がない」との意見には同情しますが、「だから安倍政権が信頼できる」と考えるのは筋違いです。それはともかく、政権や政党の善し悪しとは別に、政策それ自体の善し悪しを検証する必要があるでしょう。 さて、安倍政権が国民に期待を抱かせる論法のひとつにトリクルダウンがあります。これは、国民が全体的に潤うためには、「まずお金持ちが潤わなければならないんだ」とする不思議な論法です。 トリクルダウンは、いまでも経済学界でほとんど支持されていない珍説といえます。しかし、熱烈なファンがいることも事実です。しかも政策立案の発想に採用