序「政治家にも分かる人権」という言い方には、はじめから奇妙なねじれが含まれている。 政治家は、法律を制定し、予算を配分し、刑罰を新設し、人を拘束し、監視し、退去強制し、給付を打ち切る制度を設計する職業である。つまり、この社会で人権侵害を組織的に発生させる能力が最も大きい職業の一つである。裁判官や人権法学者ほど詳細な学説的知識を持つ必要はないとしても、人権を実務的に理解する責任は、その権力の大きさに比例して重い。政治家は「人権を最もよく知っているべき人」であるというより、正確には「人権を知らないことが最も許されない人」である。 ところが現実には、当の政治家が、人権をあたかも「犯罪者への甘やかし」「外国人への特権」「多数派の意思を妨げる理想論」であるかのように語る場面への批判が繰り返され、政治家の人権感覚に対する不信がたびたび表明されてきた。向き合うべき問題は、一つではない。政治家は本当に人権

