口に出してはいけないと、秘密の過去がある。 その過去は、今の私の世界に存在しないことになっている。 私にあんな過去は無かったことにするため行動してきた。 あの過去は誰にも知られてはいけない。 でも、それが私を形作った。 その過去は私の輪郭。私をしっかりとみつめる人がいれば、秘密は知られるだろう。 秘密を隠すため、私は嘘を身にまとう。 美しい衣装を身にまとい、誰にも嫌悪感を抱かせないようにする。 求められても、素肌に刻まれた傷をみせることはできない。それはあまりにも醜い。 嘘を身にまとった体では、風を感じることはできない。 子供の頃、素足で感じた泥のなめらかさを感じることはできない。 でも、身にまとった衣装は、私が選んだ。過去が作り出す輪郭はどこまでも消せない。 嘘もまるごと包み込むのが、人間には必要。 嘘ごとまるごと飲み込んで、やっと人間になる。 私は嘘をつく。 私の輪郭を作っている過去は