──技術進歩とも関わることですが、二一世紀の映画はどうなっていくとお考えでしょうか。 【ゴダール】映画の未来がどうなるのか、私にはわかりません。今、技術進歩という言葉が出てきましたが、技術進歩といっても、進歩は相対的なものだと思います。現在のパナビジョンのカメラは、リュミエール兄弟の頃のカメラとあまり違っていません。たとえばソニーの小型カメラがありますが、それでクロッキーを作ったり、メモをしたりするのには面白いものだと思います。しかしあまりにも容易に撮れてしまうので、その簡単さによって、人々はだまされると思います。この小型カメラで自分が映画作家と思い込んでしまう危険があります。たとえば鉛筆を持っているからといって、自分がデッサンを画ける画家だと思い込んでしまってはいけません。鉛筆があっても、レンブラントやゴヤのようにデッサンができるわけではないのです。ソニーのカメラにしても同じです。ソニー