-森万佑子『韓国併合―大韓帝国の成立から崩壊まで』、中公新書、2023年 著者の専門は朝鮮半島の地域研究。従来日本では歴史学や政治学の文脈でとりあげられることが多かった「日韓併合」を、特に高宗の視点を重視しながら「大韓帝国が成立して崩壊していく過程」として描く試み。近代の日朝関係を朝鮮・大韓帝国の視点を中心にして描いた一般向けの書籍がなかったわけではなく、例えば岩波新書ならば超景達『近代朝鮮と日本』などがあるが、「日韓併合」というテーマに特化したものではない。このテーマに関する文献を幅広く読んできたわけでもないので「管見の限り」にもほどがあるけれども、新鮮な読書体験であった。特に朝鮮・大韓帝国側の史料がもつ特徴についての指摘は勉強になった。 「日韓併合」について語る際に避けることができないのはその法的な評価である。「徴用工」問題ひとつをとってもその根っこはそこにあると言ってよい。本書では(