田中徹二 保己一物語 著者の堺正一は、埼玉県の特別支援学校などで教鞭を執り、埼玉県立盲学校(現、埼玉県立特別支援学校塙保己一学園)校長を務めた人である。現在、立正大学社会福祉学部社会福祉学科教授だ。 本書は、第1章盲学者・塙保己一小伝―世のため、後のために、第2章塙保己一を支えた女性たち―長女とせ子の回想、第3章あれから―今に生きる塙保己一の3章から成っている。第1章、第2章は、読みやすさを主軸にし、史実に基づく伝記というより、史実を基に著者が創作した物語である。特に第2章は、長女が保己一の死後、父を回想するモノローグになっている。本書の特色は、この章にある。因(ちな)みに第3章は、保己一にまつわるエピソードが紹介されている。 保己一といえば、『群書類従』『続群書類従』の編纂者であり、江戸時代の国学者として、また和学講談所で学問を教えたことで有名だ。目が見えないのに、対面で読んでもらい多く