5年前、人材派遣最大手のクリスタル(当時)がグッドウィル・グループ(GWG。当時)に883億円で買収された。小が大を飲み込む買収だった。ファンドが介在し、スキームも複雑で、売り手のクリスタル創業者は、買い手がGWGであることを知らされていなかった。 その後、この買収を事実上仲介したのが投資会社を経営する公認会計士の中沢秀夫で、中沢らは383億円もの利益を得ていたことが明らかになる。法人税を脱税 したまま海外へ逃亡し、やがて逮捕、起訴される。タイトルにある男とは中沢のことだ。当時、中沢の名前はどこにも出ていない。中沢と共謀したとして起訴さ れたのが本書の編著者である。クリスタル株取引に直接は関与していないが、取引終了直後に中沢の投資会社の経営に携わるようになり、中沢から買収の経緯を 聞かされていた。裁判の資料なども盛り込まれていて、ファンドを使った買収劇の実態が生々しく再現されている。 経緯