ブックマーク / www.sakuranbo.co.jp (8)

  • 明るく楽しく暗部に迫る悲痛なコメディ「ちーちゃんはちょっと足りない」深町秋生のコミックストリート

    南陽市出身、第三回「このミステリーがすごい!」大賞受賞作家の 深町秋生さんが、毎回、独自の視点で気になる漫画・お勧めのコミックをセレクト! 「このミステリーがすごい!」大賞受賞作『果てしなき渇き』を原作とした映画 『渇き。』が2014年6月27日より全国ロードショー。 読んでいて窒息しそうな一冊だった。  鬼才・阿部共実の新刊『ちーちゃんはちょっと足りない』だ。魔球のような短編で読者を翻弄しまくった『空が灰色だから』を手がけた作者の初の長編作品だ。 http://www.sakuranbo.co.jp/livres/cs/2012/06/post-49.html(先の読めないキュートな不気味「空が灰色だから」)  「空が~」はコメディのようでいて、人間の狂気にひたひたと迫る、シュールかつ不気味な快作だった。ざらっとする読後感を与える強烈(悲痛ともいえる)な作品だったが、今回の『ちー

    明るく楽しく暗部に迫る悲痛なコメディ「ちーちゃんはちょっと足りない」深町秋生のコミックストリート
  • 血と涙をインク代わりに。苦闘の傑作「裁判長! ぼくの弟懲役4年でどうすか」深町秋生のコミックストリート

    南陽市在住、第三回「このミステリーがすごい!」大賞受賞作家の 深町秋生さんが、毎回、独自の視点で気になる漫画・お勧めのコミックをセレクト! 最近、ネットを見ていてびっくりしたのが、「今、裁判傍聴デートが熱い!」という記事だった。どこで目にしたのかは忘れてしまったが。  読んで字のごとく、裁判を傍聴して、知的かつ野次馬な好奇心の両方を、無料で満たせるということで、若いカップルの間で流行しているんだそうな。法廷が。当かどうかは知らないけれど、それだけ日でも裁判が身近になったということなのだろう。「法廷で会いましょう!」という挑発の文句は昔からあるけれど、今はどうやらそういう時代のようなのだ。  同様に傍聴モノというのも、すっかりエンタメのひとつとして定着したようで、ライターによる文章だけでなく、コミックや映画テレビドラマと多方面のメディアで見かけるようになった。今回取り上げる『裁判長!

  • 暗いゲーセンに宿る美しい夕焼け「ハイスコアガール」 深町秋生のコミックストリート

    南陽市在住、第三回「このミステリーがすごい!」大賞受賞作家の 深町秋生さんが、毎回、独自の視点で気になる漫画・お勧めのコミックをセレクト! 私の青春は暗かった。何度もブログやこの連載でも書いてるけれど。  学校には居場所がなく、クラスのなかの派閥争いやカースト制にうんざりする一方、小心者だったので、ドロップアウトする勇気もなかった。勉強が嫌いなわりには、吐気をこらえて受験勉強に勤しみ、ストレスをどんどん溜めこんでいった。ちなみに女の子とのコミュニケーションの取り方もわからなかった。  今も締め切りに追われたり、ゼニを稼ぐためにあくせく働き、物語をつくるために脂汗をたらたら掻いている毎日だが、あの十代のころのどんづまりな暗黒を考えると、今のほうがずっと幸福ではある。荒井由美の曲みたいに「あの日にかえりたい」といった感情はほとんど抱くことはない。  ただし、どんな行き場のない少年少女にも、ひ

  • 2011年極私的ランキング・ベスト5 深町秋生のコミックストリート

    南陽市在住、第三回「このミステリーがすごい!」大賞受賞作家の 深町秋生さんが、毎回、独自の視点で気になる漫画・お勧めのコミックをセレクト! さて、今回も一冊取り上げたるで!  ……と言いたいところだが、今年最後の回でもあるので、今回は2011年に発売されたコミック作品の、私的ベストファイブという企画で、やってみようと思う。  今年の傾向としては、やはり震災のおかげで、心にしんどいダメージを負い、重厚長大な物語よりも、つらい現実を忘れさせてくれるようなグルメコミックや短編、ライトな物語がヒットした。とりあえず改めて今年を振り返りたい。ちなみに過去のコミック評で取り上げているので、そちらも読んでいただければ幸いである。 ●1位・『めしばな刑事タチバナ』(原作・坂戸佐兵衛 作画・旅井とり/徳間書店)「まだ、この手があったか!」と、グルメコミックに旋風を巻き起こした傑作。取り上げるテーマは、イン

  • 失われていく人を包む光。スペイン発の感動作『皺』深町秋生のコミックストリート

    南陽市在住、第三回「このミステリーがすごい!」大賞受賞作家の 深町秋生さんが、毎回、独自の視点で気になる漫画・お勧めのコミックをセレクト! 世のなかには、「できれば考えたくない」「先送りしておきたい」というものが、つねにあるものです。  いきなりなんの話かといえば、この時期の山形がまさにそれで、車のタイヤを冬用スタッドレスに変えなければまずいのだが、原稿をガリガリ書いているうちに、雪がどんどん降り積もって、どこにも外出できなくてなってしまう……。なんてことを、毎年繰り返しておるのです。このまま行けば、今年も順調にそうなりそうです。  そんな行き当たりばったりの性格なので、もっと大人として考えなきゃならない問題が山積しているのだけれど、そういうのをすべて放置したまま、今日にいたっている。たとえば親の介護や将来設計、自分自身の身体などなど。尿酸値とか血圧とか血糖値(それと減っていく頭髪)とか

  • 異人たちとの季節。市川春子「虫と歌」「25時のバカンス」 深町秋生のコミックストリート

    南陽市在住、第三回「このミステリーがすごい!」大賞受賞作家の 深町秋生さんが、毎回、独自の視点で気になる漫画・お勧めのコミックをセレクト! ついに市川春子の新刊が先月発売された!   ……と、コミックファンの間では話題になっている。短編集『25時のバカンス 市川春子作品集Ⅱ』(講談社)だ。おそらく、年末恒例のコミックランキングなどを賑わすのではないかと思う。  2009年発売のデビュー作の短編集『虫と歌 市川春子作品集』(講談社)は、カルチャー誌「フリースタイル」の年間ランキングで1位に選ばれ、第14回手塚治虫文化賞新生賞を受賞。ベストセラーとなった。しかし寡作なマンガ家で、なかなか新作が発表されないものだから、「ようやく出たのか!」とお祭り騒ぎになっているのだった。私も待ちかねていたひとりである。  市川作品は、おそらくSFやファンタジーのジャンルに入るのだろう。『虫と歌』をはじめて読

  • その人の素顔|平山夢明(作家)×深町秋生(作家)対談  「最初の種になる仕事が好き」

    第20回は作家の平山夢明さん(聞き手は講座出身の作家の深町秋生さん)。アイディアの生み出し方や小説に対する想い、そして東日大震災について話していただきました。 ◆大藪春彦賞受賞作『ダイナー』/執筆は人間の生理に反する ――『ダイナー』で第13回大藪春彦賞を授賞されました。おめでとうございます。傑作ですけれど、料理の描写がとくにすばらしいですね。料理はするんですか? 平山 おれ、料理しないんだよね。せいぜいゆで卵とかカップヌードル作るぐらい。べるほう専門。 ――『ダイナー』では、ハンバーガーを作る過程も詳しく書いてます。 平山 おれは肉がえないんだけど、ひき肉にしたハンバーガーならいけるんだよ。だから舞台をハンバーガー屋にしたんだけど、取材のためにあちこちいに行ったよ。いろんなものをって、ひとまず研究してみようと。原宿とかにあるんだよね。小じゃれた店がさ。そこでいろいろったけど、

  • その人の素顔|「小説家という職業について」 矢作俊彦( 作家) ×池上冬樹(文芸評論家)対談

    第16回は作家の矢作俊彦さん。「小説家という職業」について語ってくださいました。 映画監督を目指していた青春時代から、影響を受けた小説映画作品、出版界の現状について幅広くうかがいました。聞き手はいつものように文芸評論家の池上冬樹さんですが、今回は矢作さんの長年の同志で、「二代目矢作俊彦」の異名を持つ小学館の文芸誌「きらら」編集長の稲垣伸寿さんにも加わっていただきました。 ◆小説家じゃない/割りに合わない商売 ――「小説家という職業について」という話で、こまかいところまでうかがいます。  矢作さんは、十代で漫画家としてデビューされています。漫画家でデビューして、22歳のときに早川書房の「ミステリマガジン」から短編でデビュー。作家となります。そのあと作家をやりながらラジオやテレビの構成も手がけてらっしゃいます。 矢作 作家はやってないです。21~23歳までの間に短編を3~4書いただけで、作

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