【開拓者編】【発見物語編】でも紹介しましたようにクロスカップリング研究の節目節目には、必ず日本人化学者の名前があります。日本人が先陣切って世界をリードしてきた化学でもあった―いやそれ以上に圧巻の様相を呈しており、ほぼ日本人化学者の独擅場だったと言ってもよいほどです。 ノーベル賞クラスの業績は世界に多数ありますが、こういう形で発展を遂げたものは、ほとんど例が無いように感じます。 なぜこうまで日本人の寄与が大きくなったのでしょうか? 筆者個人の独断と偏見を交えつつ、今回はそのあたりを考察してみました。 研究情報のメインフローは、「日本人から日本人」にあった? 当時それほど注目を集めてなかった日本の学術誌に原初報告が多くなされたというのが、クロスカップリングが日本で盛んたり得たひとつの理由ではないか? そう筆者は想像します。 ノーベル賞を取るような科学の場合、原初報告がごくマイナーなジャーナルに