映画作家スタンリー・キューブリックに憧れた男は、自身が作家になるのではなく、作家の器になった。世界有数のオタク・コミュニティ経営者の肖像。 Photo: Tsukuru Asada Text: Hidetsugu Tomita(GQ) 「中二病」と呼ばれるスラングがある。自分を特別な存在だと思い込んだりする、思春期特有の“病い”である。「大学時代、あまりにも中二病だったんで」と述懐するのは、世界中からイラストが投稿されるサイト「pixiv」を運営するピクシブ代表取締役社長の片桐孝憲だ。 片桐はクリエイターではない。映像製作に没頭した大学時代、「自分は作家ではない」と気づいてしまったのだ。中二病患者にとっては、自分が特別な存在ではないと知る辛い場面である。しかし、作家性の欠如を挫折とは思わなかった。「自分が人気者になりたいわけじゃなくて、自分が作ったものが人気になってほしいんですよ」