ヴィクトル・ペレーヴィン『宇宙飛行士オモン・ラー』(群像社) ペレーヴィンの翻訳新刊。同じ群像社から出ている『チャパーエフと空虚』とは違うテイストなれど、なんとも言えない風味の幻想小説。社会主義というコンテクストの中で繰り広げられる不条理劇で、描写描写の反復により読み手に虚無感を綴りこんでいくのがよい。物語の舞台が社会主義国という設定のため、一つ一つのプロセスが官僚主義的で非効率なのだが、純粋なオモン・ラーは教官たちに「再教育」されるために、ますます使命に凝り固まり、ある種のイデオロギーをコアに持つことになる。また物語のところどころに旧ソビエト連邦で行われていたと思われる実験などを思わせるイメージを挿入したり、愚直なまでの反復やナンセンスで不連続的なカットを入れることにより、不条理さを強調する意図があったと思われる。そのため、つながりの悪い出来の悪いコメディ映画を見ているような感覚に囚われ