眉を下げて笑う。 『トラペジウム』の話をするかずみさん(編注:高山一実)は、いつにも増して早口だった。 この作品を通して私はかずみさんのことを考え、理解し、すべて知り尽くした気になって楽しんでいる。 かずみさんの文章はとても優しい。説明的で分かりやすく、読み手を導く細かな工夫はそう簡単に出来るものではないんじゃないかと思った。 しかしそう感じたとき、同時に気づくことがあったのだ。 読み進めていくと頭に浮かぶ、かずみさんの悪戯っぽい笑顔。 この人いま楽しんでいるぞ。 この人読み手を“グラつかせにきている”な……。 基本的には読み手に委ねてくれる文章の波。時々それに乗れなくなる。私はどうも、それが好きらしい。 小説家としてのプライドを微かに感じるような気がするのだ。いかにこの作品を大事にしているのかがよく分かる。 文章には人となりが表れる。というのが本当だとして、それに当たり前に恐怖を抱くのが
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