2008年4月6日のブックマーク (1件)

  • 「石版!」別館

    犬塚リツが大戦後まもなくアメリカに渡ったのは、夢を追うために他ならなかった。横浜の長津田に漢学者の家の一人娘として生まれた彼女は、大戦中は田奈にあった弾薬貯蔵施設で働いていた。終戦時、18歳。彼女が働いていた施設は進駐軍によって接収されたが、そのまま彼女は施設で働き続けることを許された。彼女はそこで英語とタイプライターの技術を学んだ。彼女がそのような環境に恵まれたのは、彼女が若く美しかったからだ。その美貌は、進駐軍の若い兵士の目にも魅力的に映った。学のある兵士たちのなかには、「絹のように輝く黒い髪……」、「近づくとお茶のようなよい香りが……」などと自分が知っている日の名産品と彼女の魅力を結びつけた詩を手帳にしたためる者もあった。リツの父、犬塚聡明は大戦中、愛国的儒家を標榜する思想家として安岡正篤などと行動をともにしていたが、安岡の公職追放と彼が設立した学校などがすべて解散させられると、ほ

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