諸宗教の聖典・経典を除けば、十六世紀フランスの医師・占星術師・詩人であるミシェル・ノストラダムス(1503~66)によって書かれた「予言集」は世界で最も読まれた本の一つに挙げられるだろう。単なるオカルトブームの書籍としてだけでなく、多くの人がその文章に何らかの意味を見出して、それがときに人々の生死を左右するほどの悲劇を呼ぶことにもなった。 ノストラダムスに関しては、世界の終末を始めとする現代までの様々な事件を予言した予言者として信奉するか、インチキ予言者として弾劾するかの二項対立が続き、ブームの中で必ずしも学術的な分析が進められてこなかった経緯がある。運命の1999年も過去のものとなり、近年、ノストラダムスを彼が生きた十六世紀フランスという歴史の中に位置づけて本格的に研究・実証することが出来るようになってきた。その、歴史の中のノストラダムスと彼の予言集はどのようなものとして位置付けられるか