新(あらた)しき年の初めの初春の今日降る雪のいや重(し)け吉事(よごと) 万葉集の最後を飾る大伴家持の歌だ。因幡(鳥取県東部)の国守だった家持が元日の宴を催した時のもの。豊年のしるしとされた元日のめでたい雪のように、よいことが続くようにとうたった。内外ともに難題を背負って迎えた新年、私たちも「いやしけよごと」と願いたい。 たぶん、執筆者はこのときの大伴家持の思いを理解していない。 これは天平宝字3(759)年、旧暦正月(春節)の歌。 背景は橘奈良麻呂の変。 天平勝宝8歳(756年)、奈良麻呂は家持の従兄弟大伴古麻呂に変の参加を求めるが拒絶。が後、古麻呂は天平宝字元(757)年に嫌疑・拷問で絶命。その後、家持自身は藤原良継と藤原仲麻呂暗殺計画に参加。 この歌はこうした渦中にある。 というか、そうした政治背景もあってここまでしか家持の私家集としての万葉集として歌が存続できなかったという歴史の墓