元町商店街の西側の始まりである6丁目。その手前の横断歩道で子供を肩車し、信号が青に変わるのを待っていると、横から声がかかる。「にいちゃん西元町の駅ってどこやろ?」見ると知らないおばあさんで、私は正面を指さし「そこやでほら。信号渡ってすぐのとこ」と答えた。「にいちゃんわたし関西ビル探してるんやけど、わからへん?」昔ならさすがにそんな細かいビルの場所まではわからへんわ、とでも答えていたんだろうけど今はスマホがあるぞ。「よっしゃ。ちょっと待ってな」とポケットに手を入れたところで初めて、その肝心のスマホを家に置き忘れてしまったことに気付いたのだ。「西元町の駅のすぐ近くらしいんやけどねえ……」まったく、よりによってこんな日に道を聞かれるなんて。いちおう近くの案内板を見ても当然ビルの名前などは書かれていない。スマホさえあれば地図アプリですぐに案内出来るのに、でもその日は外に出るといつもよりあたたかかっ