ニシノユキヒコの恋と冒険 (新潮文庫) 作者: 川上弘美出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2006/07/28メディア: 文庫購入: 2人 クリック: 35回この商品を含むブログ (202件) を見る ちょっと前、井口奈己監督による、「ニシノユキヒコの恋と冒険」を見ました。 ちぐはぐだけど、魅力的な、だけど、すっごくちぐはぐな映画でした。 原作は川上弘美による連作短編で、10 人の女性がそれぞれに「西野幸彦」の来し方を語るというもの。ティーンの西野くん、サラリーマンの幸彦、50代のユキヒコと、様々な像が浮かんでは消え、ぱたんと本を閉じたときは「あの人、ほんとにいた……?」みたいな読後感。まさに大きな象をあっちからこっちから触ってみたという感じ。 映画化するとしたら、いかにも大変そうだ。 散文化されることを拒んだ、小説ならではの楽しみに満ちたこの小説を、時間芸術である映画でやるのはいかにも
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渡辺真也 「自分らしく、自分だけの生き方のルールを見つけること。」簡単な問いではあるが、皆が思い悩むことではないか。私自身も思春期から今に至るまで、それを見つけようと努力してきた様に思う。 この問いが暇と退屈の問題だと気付かなかった私は、答えを見つけるべく、がむしゃらに生きて来た。しかし哲学者である國分功一朗氏は、この問いが暇と退屈にどう向き合うのかという人類普遍の問題であることを指摘し、本書ではこの問いをたてた等身大の自己に向かい合いながら、この答えを見つけて行こうと試みている。 この本は人生論であり、人生の本質をつかむ為の啓蒙書である。にもかかわらず、哲学書としては異例と言って良いほど読み易く、読み進めて行くうちに、あたかも著者と一緒にこの問題を考えているかの様な錯覚に捕われる。「自分らしく、自分だけの生き方のルールを見つけること。」その為にはどうしたら良いのだろう?と思い悩む全ての人
「自分を疑う」これが最も難しい。 誰かの矛盾を突くのは簡単だし、新聞などの不備を指摘するのは易しい。科学的説明の怪しさを探すのは得意だし、だいたい『言葉』や『記憶』こそあやふやなもの。しかし、そんなわたしが最も疑わない―――あらゆるものを疑いつくした後、最後に疑うもの―――それは、自分自身。わたしは、自分を疑い始めるのが怖くて、家族や仕事に注意を向けて気を紛らわしているのかもしれない。自己正当化の罠。 では、こうした日常の諸々から離れたところに放り出されたら? たとえば旅先で交通手段を失い、宙吊りされた場所に居続けたら? 読む本も話し相手もいないところで、ひたすら自分と向き合うことを余儀なくされる。最初は、直近の出来事を思い出し、何気ないひとことに込められた真の意味を吟味しはじめる。それは次第に過去へ過去へとさかのぼり、ついに自己満足そのものに及ぶ。 クリスティーにしては異色作、誰も死なな
無人島にはチャンミンつきのつりどうぐとユノつきのライターを持参したい澁谷ですこんにちは。 唐突に始まります。本記事の目的は9月28日リリースの東方神起5枚目の日本版アルバム『TONE』の音楽レビューを書くための準備として「音楽レビューとは何か」を明らかにすることである。準備なので『TONE』や東方神起についての言及はナシ。とっととレビューだけ読ませろやという方は近ぢかアップ予定の次エントリ(追記 12月31日エントリに執筆しました)へ飛ばれたい(ただし、結果として「音楽レビュー」にはならなかった。代わりに「音楽版・生活綴り方」というべきものになった)。 思えば、東方神起について当ブログその他であれこれ発言してきたが、まともに音楽レビューというものをしたことがなかった。音階の知識がないのに音楽レビューをするのは不遜だと思っていたからである。ムダに長くピアノを習っていたので、楽譜は読めるものの
リトル・ピープル(小さな父)の時代。それは、革命ではなくハッキングすることで世界を変化させていく「拡張現実の時代」である−。村上春樹の分析を皮切りに、内外の物語的想像力の… リトル・ピープルの時代 [著]宇野常寛 本書は『ゼロ年代の想像力』で華々しいデビューを飾った若手批評家の三年ぶりの書き下ろし評論集である。テーマは再び「想像力」だ。議論の構えは大きい。震災後の現状をふまえ、宇野はまず村上春樹を参照する。ビッグ・ブラザーが体現していた「大きな物語」が失効し、人々は目先の「小さな物語」に依存しようとする。 『1Q84』で村上が描いた「リトル・ピープル」こそは、意図も顔も持たずに非人格的な悪をもたらす「システム」の象徴だ。今必要なのは、制御不能におちいった「原発」のような巨大システムに対する想像力なのだ。 しかし宇野は、村上作品に頻出する、男性主人公の自己実現のコストを母なる女性に支払わせる
小松左京の代表作。永遠に砂の落ち続ける砂時計を太古の地層から発見した主人公が、何十億年もの時空を超えた戦いに巻き込まれるというストーリー。宇宙になぜ人間のような知的生命体がいるのか、という問いに挑んだ作品。アシモフ「永遠の終わり」を豪勢にした感じです。科学・未来予想・オカルト・伝説・神話など、全方位的な知識をまるで幕の内弁当のごとく詰め込んでいるので読み応えがあります。 以下ネタバレ。 たしかに古いなあと思う箇所はあります。たとえば知性や意識について考察するシーン。言いたいことはわかるんだけど言葉のチョイスがまずいです。 それ自体は物質そのものでもなければ、エネルギーそのものでもなく、そのいずれをも超えるものだ――物質を認識してエネルギーの法則を認識できるもの――物質やエネルギーを前提しながら、そのいずれからも、はなれているもの――『負』の存在、マイナスの場、マイナスのエネルギー、マイナス
1940年、アメリカ最大の広告代理店・トンプソン社の常任最高顧問ジェームス・W・ヤングによって書かれた「アイデアの作り方」が、めちゃくちゃ洗練されていたので紹介します。この本の主文のページ数は、たったの62ページで、さらに、非常に大きな字で書かれています。これだけ短いページで、しかも現代にも十分すぎるほど通用する内容が書かれており、はっきりいって驚きでした。 アイデアのつくり方posted with ヨメレバジェームス W.ヤング 阪急コミュニケーションズ 1988-04-08 Amazon楽天ブックス7netブックオフ 基本的スタンス 良いアイデアと言うものは、一見、偶然の産物、一握りの才能ある者だけが作り出せる物のように見えます。しかし、もし、アイデアの形成される過程が、一定の明確な心理的なプロセスであるなら、アイデアを生みだす技術を習得し効果的に使いこなせるのではないか?これが本書の
団塊世代の下になる私の世代までだと、ギリシア神話といえば、トーマス・ブルフィンチ(Thomas Bulfinch)がまとめた"The Age of Fable, or Stories of Gods and Heroes"の訳本が定番ではないだろうか。タイトルの直訳は「寓話の時代:神々と英雄の物語」だが、日本では「ギリシア・ローマ神話」となっていた。私は中学生のとき、角川文庫のけっこう分厚い本で読んだ。辞典のようにも利用できるのが便利だった。 今でもあるのかと調べると、ある。上下巻に分かれるが「完訳 ギリシア・ローマ神話」(参照上巻き・参照下巻)となっている。映画「トロイ」(参照)がきっかけで復刻したようだ。 他に岩波文庫のがあったはず。調べると、こちらも、ある。一冊にまとまった「ギリシア・ローマ神話―付インド・北欧神話 (岩波文庫)」(参照)である。 角川文庫の訳は昔と変わらず大久保博、
「極東ブログ: [書評]カラマーゾフの兄弟(亀山郁夫訳)」(参照)で扱った新訳「カラマーゾフの兄弟」の訳者がその訳業に重ねて、満を持して発表した続編説であり、現在水準の研究成果も反映し、穏当とはいえないにせよ、さすがに否定しがたい圧倒的な想像力をもって書かれている。編集者の女性もものすごいお仕事をされたようだ。新訳カラマーゾフの兄弟の魅了された人にとっては必読書になるだろう。 ただ私は、亀山の想定はもっとも大きな線で間違っていると思った。ブログなので夜郎自大な話になるかと思うし、別の書評のようにあえて韜晦に表現しておくほうがいいのかもしれない、が、率直に書いておきたい。 私の読みが間違っているということは大いにありうるというか、その留保は当然のこととして、なぜカラマーゾフの兄弟という小説が書かれたのか、この小説のテーマは何かということが、「『カラマーゾフの兄弟』続編を空想する(亀山郁夫)」
「これからの「正義」の話をしよう いまを生き延びるための哲学(マイケル・サンデル)」(参照)をアマゾンで注文したとき、発送は随分遅れるとのことだった。発売日には来なかった。が、翌日来た。昨日である。読みやすく面白い。昨晩熱中して半分読み、今日後半を読み終えた。政治哲学をこれだけわかりやすく説明する書籍は希有ではないか。高校生や大学生には社会を考えていく上で是非お勧めしたい。 本書巻末謝辞を見ると、「本書は講義として誕生した」とある。講義は「ハーバード白熱教室」というタイトルで現在、NHK教育放送中らしい。私は見たことがない。英語のままであれば「Justice with Michael Sandel」(参照)で見ることができる。もっと小さなクラスの講義かと思ったら、大講堂での講義である。 政治哲学というと厳めしいイメージがあるが、サンデル教授は卑近な例、日常的な問題、社会ニュースの話題など馴
当初勘違いで、別の小冊子、日本のアービンジャー・インスティチュート・ジャパン監修の編集書「実践 自分の小さな「箱」から脱出する方法」(参照)を購入した。ついでなのでこのパンフレットみたいな書籍に目を通したのだが皆目わけがわからず、結局編集元になる本書、「自分の小さな「箱」から脱出する方法(アービンジャー・インスティチュート)」(参照)を読んだ。2006年に出版された邦訳である。こちらはわかりやすかった。小説仕立てになっていて、よく読むと微妙な心理の動きや伏線などもある。 結論から言うと、当初かなり違和感があった(そのために勘違いした)が、本書は良書であると思った。人によってはかなりインパクトを受けるだろう。私も率直なところかなりインパクトを受けた。 最初に、ネガティブな批判に聞こえるかもしれなが、同書についての違和感をまとめておきたい。 オリジナルは2002年に出版されたベストセラー「Le
今までわかりやすい文章についての書籍をいくつか読みましたが、いまいちピンときませんでした。センテンスを短くするだとか、飛躍がないように文章を続けるだとか書いてあるんですが、結局のところどう書けばよいのか?どう読めば良いのか?は謎のままでした。しかし、野矢茂樹の「論理トレーニング101題」、これには驚きました。本書は論理学の入門書です。入門書ながら本書の中では、論理、論証のスキルを向上させるプログラムがしっかりと組まれています。その一部と、実際に101題といてみた感想をまとめます。 論理トレーニング101題posted with ヨメレバ野矢 茂樹 産業図書 2001-05-15 Amazon楽天ブックス 論理とは何か? この著者は論理力を「思考力」と混同することに警鐘を鳴らしています。 論理の力とはむしろ思考を表現する力、あるいは表現された思考をきちんと読み解く力にほかならない 言いたいこ
2010年05月14日09:30 カテゴリ書評/画評/品評Taxpayer 二つのギャップ - 書評 - 日本の大問題が面白いほど解ける本 光文社新書編集部より献本御礼。 日本の大問題が面白いほど解ける本 高橋洋一 日本の大問題が解けるかはさておき、確かに面白い。実に明瞭かつ明快。著者の問題意識とその回答は、私のそれともかなりの部分一致するという点で我が意を得たりの一冊でもあった。 と同時に嘆息せざるを得ない。 やはり望遠鏡は顕微鏡を兼ねることは出来ないのだ、と。 本書「日本の大問題が面白いほど解ける本」は、「さらば財務省!」で名をはせ、窃盗容疑で書類送検され一度は著者名を抹消された著者の、「復帰後」第二作。第一作が「バカヤロー経済学」の続編なので、事実上の復帰作はこちらではないか。 その「バカヤロー経済学」以上にわかりやすい本書は、「タカハシ先生に聞いてみよう」という一問一答形式の項が、
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