朝のミーティングの最後、部長が突然かつらを取った。 部長がかつらであることは社内の常識だった。 「みんな知っていると思うが、私はかつらだ。以上、今日もがんばろう」 それだけ言って、部長はデスクに戻っていった。 私たちはびっくりして誰一人持ち場に戻ることができずにいた。 数秒して、声がでかいことしか褒める所のないある上司が、 「ぶ、ぶ、部長ぅ~。なんですか突然~」 と沈黙を破ったのをきっかけに、フロアはざわつき始めた。 部長は顔を真っ赤にして、帽子のようにかつらを右手でちょこっと上げた。 私は、部長が英国紳士みたいに思えた。 そんだけ。