東京から大阪へと引っ越した私は、たまに東京へ帰るたびに無性に醤油ラーメンが食べたくなる。鶏ガラベースのシンプルであっさりした、東京の下町らしいラーメン。 町の中華料理店でそういうラーメンをズルズルとすすっては、「ああ、東京に帰ってきたなぁ」と感慨にふけるのだ。 そのいわゆる「東京ラーメン」を代表する老舗が、渋谷区の笹塚にある。店の名は『福寿』。創業67年。昭和の時代をそのままに伝える店の建物は、眺めていると「遺産」という言葉が頭に浮かぶほど、貴重なものに思える。 そしてその建物の中で食べるラーメンは、シンプルでありながらどこまでも味わい深い。 今回、改めて『福寿』のラーメンを味わいつつ、この店の2代目店主である小林克也さんにゆっくりお話を聞いてきた。 愛おしさがこみあげてくるようなラーメン やってきたのは、京王電鉄・笹塚駅。 駅前はキレイに整備されている印象だが、駅の北側には下町感のあふれ