リーグが違った日本では、公式戦で当たることはなかった。「オールスター以来だと思う」と、桑田は記憶を1997年までさかのぼらせた。神宮でイチローを遊ゴロに打ち取ったのが10年前。舞台を米国に移し、懐かしい対戦が実現した。 まずはイチローを相手する喜びを感じた。次に大リーグ屈指の好打者への対策を練った。7回の先頭がイチローと決まったのが、6回を9番打者で終えた時。「配球を頭の中で考え、捕手に初球はこれから入ろうと」。味方の攻撃中に、ベンチで念入りに準備を行ってのマウンドだった。 初球はボールから入り、2、3球目は変化球を続けてストライク。最後は外角への完全なボール球を振らせた。桑田が思い描いていたのは内野ゴロだったが、結果はそれ以上のものとなった。 空振り三振を奪ったことは、たまたまと言う。「彼も攻め方を立ててくるし、次はやられるかもしれない」と冷静に話した。投げてみて初めて共感したこと