序 そんなわけで。新海誠著「小説版・秒速5センチメートル」の感想。この小説版は、同監督のアニメ映画「秒速5センチメートル」を元に、アニメ版を観ていなくても読めるように作りつつ、相互補完的な内容にもなっている。非常に自分好みな文体で書かれていて嬉しかった。これからは作家としての新海誠にも期待したい。 本作品には特別な思い入れがあるのだけれど、それはまた項を改めて書こうと思う。このエントリでは、作中に出てくる一つのキーワードに着目した感想を手短に述べることにしよう。 たった一つの言葉 僕が最初に「秒速5センチメートル」アニメ版を観た時、最も印象に残ったのが以下の台詞である。 「貴樹くんは、きっとこの先も大丈夫だと思う。ぜったい!」 これは、第一話「桜花抄」で貴樹と明里が別れる際に明里が告げた言葉だ。この言葉は、形を変えて第三話「秒速5センチメートル」に再び現れる。山崎まさよし「One more