ある奇妙な現象が、周囲で頻繁に起こるようになったのは、十代最後の半年間のことでした。その頃わたしはまだ学生で、週三回ほど居酒屋でアルバイト。バイト先の常連客は、同世代か少し上くらいの子たちが多く、気安く口を聞く間柄。発端は、居酒屋の常連のひとりだった大学生の証言です。彼は先日、赤のミニ・クーパーを運転するわたしを見掛けたという。しかし、わたしは車はおろか、免許すら持っていなかった。別人だろうと答えましたが、彼は首を捻ります。そうとはとても思えない。それほど似ていたのらしい。 でも、わたしではありえません。彼も最終的に「では別人なのだろう」と納得しました。そしてわたしもただのそっくりさん情報としてそれを処理。けれど以後、そんなことが頻発するようになります。ここで見た、あそこで見たという友人知人の報告が、毎日のように続いたのです。だが、そんなはずはない。彼らがわたしを見掛けたという場所は、今ま